総合型地域スポーツクラブを目指して
戦後の日本のスポーツ界は「学校体育」と「企業スポーツ」が中心だった。それが、近年いろいろな問題を抱えて、行き詰まりが生じている。 学校体育は少子化による生徒数の減少や、根強い勝利至上主義の弊害、あるいは指導のできる顧問の不在で部活動の勢いがなくなった。
一方、企業スポーツは、国際的なプロ化の波と長引く不況の影響で、プレー環境が悪化している。 サッカーをはじめ、国内のスポーツを取り巻く環境は否応なしに変化への対応を迫られているのが現状である。
そうした中、学校や企業の枠を越え、地域住民が主体となった地域スポーツクラブが、新しい時代のスポーツの担い手として求められている。 しかし、一クラブが学校体育や企業スポーツに代わる受け皿となるためにはさまざまな条件整備、積極的活動が求められる。 何よりも、社会的存在として認知されることが必要だ。その一つの手段となるのが、98年3月に公布され、12月から施行されたNPO法であろう。
日本の社会構造はこれまで行政主導型であったが、このNPO法の出現で、市民参加型行政、住民自治へと変革していく可能性が出てきた。 NPO法人化されることで、初めて社会的使命を達成できる基盤づくりが可能となるのである。
私は、1992年にサウスユーべFCを発足させ、これまで幼稚園児、小学生を対象にサッカー指導を行ってきたが、 卒業してサッカーから離れざるを得ない子どもたちを見るたびに、もっと長い期間サッカーを続けられる環境を提供できないものかと忸怩たる思いでいた。 いつか欧州のようにクラブハウスを持ち、子どもから大人まで、あるいは年をとってプレーができなくなっても、 サッカーをこよなく愛するものが集う地域型クラブをつくりたい・・・・・・。
そんな夢を目指す一つのステップとして、 社会的に認知された団体、特定非営利活動法人(NPO)の道を選択した。
幸い、東京都練馬区のスポーツ団体でNPO法人格を取得したのはサウスユーべFCが第一号である。
今後、行政側との話し合いの中で共同歩調をとりながら、将来の総合型地域スポーツクラブを目指して、環境整備に努めていきたいと思う。
自由にスポーツを楽しめる環境、それはあくまで日常的なことであらねばならない。
そして、その中から日本を代表する選手が生まれてくることこそスポーツ文化なのであろう。
特定非営利活動法人(NPO)サウスユーべFCは、サッカーを愛好する者に対して、サッカーの普及および啓蒙、指導者の育成に関する事業を行い、 地域に根ざしたスポーツの発展に微力ながら貢献していく所存である。
2002年5月17日 NPOサウスユーべFC理事長 神津 慧